10月6日(土)に、慶應義塾大学言語文化研究所50周年記念公開講座が行われました。
以下のプログラムで、言語文化研究所、専任所員の7人の先生方から、ご講演いただきました。
嶋尾稔教授 「北と南-19世紀ベトナムの国土観・歴史観」 小池和子准教授 「キケローと歴史叙述」 野元晋教授 「神と預言者をめぐって-シーア派イスラームの神学思想から-」 タンクレディ,クリストファー教授 「Meaning, Belief and Reality」 北原久嗣教授 「中谷宇吉郎とノーム・チョムスキー」 三上直光教授 「日本語と東南アジアの孤立型言語」 大津由紀雄教授 「ことばについて語る子どもたち」
特に印象に残ったお話を二つご報告致します。
一つ目は、三上直光教授の「日本語と東南アジアの孤立型言語」です。
日本語との比較をまじえながら東南アジアの孤立型言語(ベトナム語、クメール語、タイ語、ラオ語…)の特徴をお話しいただきました。
普段ほとんど日本語と英語にしか触れない私にとっては、予想もしないようなルールが東南アジアの孤立型言語にはあるということが分かりました。例えば、数詞と共起しなくても類別詞(classifier)が使えることや、文法範疇としての時制がないことが挙げられます。
一方日本語との共通点としては、コンテクストへの依存度が高いことが挙げられます。日本語では、聞き手が自分の言いたいことを理解してくれるだろうと期待し、主語を述べなかったり、曖昧な表現を使ったりしますが、東南アジアの孤立型言語でも同様の現象が見られるということが分かりました。言語と文化の関わりの深さ、そして文化的側面を考慮した言語研究の重要さを再認識しました。
二つ目は、大津由紀雄教授の「ことばについて語る子どもたち」です。
このご講演では、インタビュー形式でことばに関する様々な質問(「2人の男の子と女の子」の解釈、「ないものはない」の2つの解釈を聞く質問など)をし、子どもたちに答えてもらったビデオが使われていました。私は、このビデオ撮影に携わったため、子どもたちが「あっ!」と気づく顔を間近で見ることができました。子どもたちは、私の想像を超える想像力・創造力を持っていて、私自身も子どもたちの気づきから学ぶことが多かったように感じます。けれども、子どもが自分だけでこのような気づきを得ることは難しいと思います。大人がどのように気づきを促していくかを考えること、そして、大人が子どもの気づきから学ぶ姿勢を持つことが大切だと実感しました。
この講演会では、なかなかお話を伺う機会のない先生方から、お話を伺うことができました。普段、自分の研究分野ばかりに目を向けがちですが、広い視野を持つためには、様々な研究分野の情報を得ることが重要だと感じました。
先生方、貴重なお話をありがとうございました。
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