フェスティバルが終わった後、誘われるままに近くの居酒屋で開かれた打ち上げの会に参加させてもらった。さっきまでは舞台の上でずいぶんと大人びて見えていた彼女たちもやはり20歳になったかならないかの女の子なのだ。じつににぎやかで、のびのびとしている。にぎやかな宴である。
話し込んでいるうちに、東京方面へ向かう最終の新幹線を逃してしまった。正直に告白してしまえば、それは想定外のことではなく、たぶん、そんな流れになるのだろうという予感があった。そこで、近江さんとバーでもう一杯ということになった。そこで話をうかがう内に、オーラル・インタープリテーションに対する近江さんの思いがじわじわと伝わってくる。こんな先生に指導を受けることができた学生たちは幸せだ。
冒頭に書いたように、南短の南山大学への統合と近江さんの退職に伴って、オーラル・インタープリテーション・フェスティバルも今回でその幕を閉じるという。じつに残念なことだ。こうした伝統は長い年月とその伝統を支える近江さんのような人がいて初めて可能になる。幸いにして、近江さんはきわめてお元気だ。近江さんには迷惑な思いかもしれないが、これからもなんらかの形で、この伝統を続けていただきたい。
そして、もう1つ、近江さんにぜひやっていただきたいことがある。それはオーラル・インタープリテーションの入門書と解説書を書いていただきたいということだ。すでに書名を挙げた『入門』が存在するのであるが、現在は品切れ状態になっているし、できれば、『入門』よりも簡潔な解説を中心にしたもので、オーラル・インタープリテーションの画像DVDが付属しているものがよいと思う。フェスティバルの画像も残っているようであるので、それを利用するのも1つの可能性であるかもしれない。
解説書のほうは、教師用のもので、オーラル・インタープリテーションには興味があるが、どう取り入れてよいかわからないという先生方のためにぜひ一冊、お願いしたい。ディベートが教室の中に取り入れられるようになって久しいが、《これはディベートではない!》という実践も数多く見受けられる。その轍を踏まないためにも、ぜひ正統派オーラル・インタープリテーションを教室に導入する際の心構えや方法を伝授していただきたい。
近江さんが築いた伝統がこれからも受け継がれていくように強く願っている。(完)
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