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美加 五十嵐

オーラル・インタープリテーション・フェスティバルに参加して(2)

更新日:2020年3月21日

 近江さんとの再会に胸をときめかしながら、地下鉄のいりなか駅からゆるやかな坂を少し上り、南短の正門に着いた。派手やかな大看板はなく、キャンパスを入ったところに、会場を案内する、こじんまりした立て看板があった。会場のまわりでは練習を繰り返す学生の声が聞こえていた。

 会場にはすでに卒業生と談笑している近江さんの姿があった。セーター姿で、くつろいだ、いつもどおりの(と言っても、直にお会いするのはこれで3度目なのであるが)近江さんのように見えた。「見えた」というのは、こちらのとっさの印象にすぎなく、近江さんの気持ちをもっときちんと解釈すると、《オーラル・インタープリテーション・フェスティバル完結篇をきちんとまとめあげなくては!》という緊張感と、《よくもまあ、ここまでたどりつけたものだなあ!》という満足感が入り混じって、いつもとは違った、とても複雑な思いが交錯していたのではないかと思う。そうに違いない。

1時30分を少し回ったところでフェスティバルが始まった。司会は現役生と卒業生のコンビで、周到に準備されたスクリプトがありながら、いかにも即興という感じで、進行していく。卒業生は野口美穂さんというプロのDJだということだが、後輩をきちんと引っ張って、出しゃばりすぎないように事を進めていく。じつに見事なものだ。そうそう、会全体の進行は英語だ。


幕開きは卒業生(第1回目の演者だった浅野(磯貝)保子さんというかたで、彼女の名前は近江さんの前掲書『入門』にも登場する)の見事なパフォーマンスだ。じつは、この時点まで気づいていなかったのだが、オーラル・インタープリテーション・フェスティバルの演者は現役の学生たちだけではないのだ。卒業生もたくさん出演する。卒業後も、近江さんを慕って、オーラル・インタープリテーションの練習にやってくる人がたくさんいるらしい。仕事を持っている人も多いから、練習時間を工面するのがなかなか大変なのだと、あとで近江さんが教えてくれた。

卒業生のパフォーマンスの後は現役学生たちの番だ。ういういしい学生たちのパフォーマンスは会場を和やかな雰囲気に包んでくれた。どの学生がどの部分を受け持つかの判断には、近江さん、きっととても神経を使っているのに違いない。英語が上手で、ものおじしない学生だけではない。英語が苦手な学生、英語が嫌いな学生、照れ屋の学生。それだけではない。小柄な学生、大柄な学生。十人十色の学生を的確に配置し、全体の構成を練り上げてあるのがよくわかる。


おや、今度はちょっと雰囲気が違う、おとなのパフォーマンスが始まったと思ったら、なんと南短の職員の方々なのだ。窓口などで英語での応対が必要なこともあるかもしれないが、業務の大部分は日本語に違いない。忙しい業務の合間を縫っての練習だったのだろう。

あれ、ちょっと耳慣れない音が耳に飛び込んできたなと思ったら、今度のパフォーマンスはスペイン語だ。先生も一緒に演じる。そのうちに、ドイツ語も聞こえてきた。

お、また職員の方々のパフォーマンスかな?と思っていると、なんと今度はコミュニティ・カレッジの受講者の方々なのだそうだ。若い方も、少し年配の方も、みんなで力を合わせてという気持ちが素直に伝わってくる。

休憩をはさんで、コンテストで優秀な成績を収めた高校生たちのパフォーマンスも加わって、フェスティバルは一層拡がりを増す。高校生たちの一所懸命さが会場の雰囲気を引き締まったものにしてくれる。

外も暗くなってきたあたりで、きょうの特別ゲストの登場となる。佐野瑛厘さんという、この女性も南短の卒業生で、司会をしている野口さんの先輩にあたるそうだ。この特別セッション、佐野さんと野口さんの英語での掛け合いになるのだが、これまたじつに見事なものだ。先輩後輩の仲ということもあって、打ち解けた雰囲気で、卒業後の生活について語るのだが、これは現役生にとって、なによりのクリスマス・プレゼントになったに違いない。聴いていて清々しく、とくに、佐野さんはまだお若いのにこんなに余裕のある、おとなの雰囲気を醸し出していることに感嘆した。

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