2015年3月23日、明海大学浦安キャンパスにおいて、学位記授与式が挙行されました。学位授与、学長告辞、理事長挨拶、来賓祝辞、成績等優秀者表彰などに続き、卒業生代表による謝辞がありました。今回の代表は外国語学部日本語学科の中部直之君でした。わたくしは副学長という立場から壇上にいたのですが、中部君の謝辞には深い感銘を覚えました。明海大学で学んだこと、これからに向けての決意など卒業にあたっての気持ちを率直に、明確に、簡潔に述べてあります。この謝辞に耳を傾けながら、このような文章が書ける学生が育った大学に籍を置いていることに誇りを感じました。このすばらしい文章を当日、式に参加した人たちだけの間に留めておくのはあまりにももったいないと考え、中部君の了解を得たうえで、ここに掲載いたします。中部君に感謝するとともに、仲介の労を取ってくださいました、日本語学科の柳澤好昭、佐々木文彦両教授にも御礼申し上げます。
謝 辞
本日は私たち卒業生のためにこのような盛大な式典を催して頂き、誠にありがとうございます。ご多忙の中、教職員の皆様・御来賓の方々のご臨席を賜り、卒業生一同心よりお礼申し上げます。
卒業という節目を迎える今、私たち卒業生の胸には、ここまで自らが置かれていた境遇、待ち受ける未来への想いが過ぎります。私たち卒業生の多くは平成のはじめに生まれ、両親・祖父母が築き上げた物質的に不自由を強いられることのない時代を謳歌してきました。
このような恵まれた時流の中で明海大学に入学した私たちは、意識的に様々な自己鍛錬の場を求めました。
私の所属した日本語学科では日本語という言語を母語として捉えるのではなく、世界の言語の一つとして客観的に捉えていくという特徴があります。幸いにも、学部内の多くの友人は日本語母語話者ではない人が多く、客観的に日本語を捉えていくにはとても都合のいい環境でした。また、違う国で育った友人たちと日々の生活を共にしていくことにより、育った環境の違いによる物事の見方や考え方の違いというものに多く触れる機会がありました。その中で、物事を見る視点の多様性とその視点を相対的に捉える力が、意思疎通や意思決定の際の質に大きく影響を与えるということを学びました。また、人は人と意思疎通の中で新しい視点を発見し、客観視し、自分の判断軸の一つとして血肉とするものだと感じることが出来ました。
昨今、日本の社会・経済は世界の国々との関係性が密になる一方で、国際的競争率や活力を徐々に失いつつあると言われています。また、2011年3月に発生した東日本大震災を通じて、人々が互いに助け合い、社会全体が共存していく必要性を強く実感することとなりました。このような難題に直面したことで、従来の政治・社会構造はもはや通用せず、個々人や地域のつながりを重視するなど、新たな価値観の形成が求められている時代に入りました。転換期にはモデルとなる国は存在せず、私たちは現実社会の競争に向き合いながら、同時に新たな社会規範を模索することを迫られています。
このような時代の転換点の中でいかなる心構えで社会に臨むべきか思い巡らすと、ただ知識の収集に専念するに留まらず、実際の行動を以て他者に働きかけていくことが今以上に必要であると感じています。新たな価値観を形成する上で、他者と衝突する恐怖に流されず、時には闘志を全面的に表してでも、その発言・態度・行動が本質的に物事を進める上で妥当であるか、追求し続ける覚悟が重要となります。
明海大学という恵まれた環境の中で切磋琢磨してきた私たち卒業生は、今後各々の進む専門分野において日々邁進し、またどこかで再会して再び刺激を与え合い、社会に優れた指針を提示出来る人間となれるよう努力して参ります。
最後になりますが、未熟な私たちをご指導くださいました先生方、学校生活を支えてくださった職員の皆様、あらゆる場面で惜しみない支援をしてくれた家族、友人に改めて御礼申し上げるとともに、明海大学の輝かしい発展を祈念いたしまして、謝辞とさせていただきます。
2015年3月23日
外国語学部日本語学科
中部直之
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