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最初の話題は東京都の英語スピーキングテスト(ESAT-J)の話題です。
Yahooニュースに転載されたTOKYO MXの2023年1月12日22時12分配信の記事によると、1月12日に開催された東京都教育委員会の定例会でもESAT-Jの今回の実施については「大きなトラブルはなかった」としていたということです。
この記事にはMXニュースの動画も添えられています。以前に紹介したすばらしいドキュメンタリーの制作に関わった椿原萌さんと、東京新聞社会部の沢田千秋さんも出演しています。
このお二人の発言部分は記事では割愛されていますが、「子どもたちの声に耳を傾けない」で、「あたかも子どもがうそをついているかのような印象をふりまいてい」ており、「教育とか、大人のやることに対して不信感を抱くきっかけにこのテストがならなければいいかなといま思っている」(沢田さん)というまさに的確なコメントがなされています。
もう何度も話したり、書いたりしていますが、子どもたち、保護者たち、そして、椿原さんや沢田さんたちの声に都知事、教育長、担当課長、教育委員はどう向き合っているのでしょうか。この状況に至り、都知事、教育長、担当課長にまっとうな反応を期待することは無理だと判断せざるを得ません。最後の頼みの綱は教育委員諸氏です。さまざまなしがらみにがんじがらめにされている都知事、教育長、担当課長とは異なり、理性的判断をしやすい立場にいる教育委員諸氏の英断を信じています。信じたいと思います。
このMXニュースについて一つだけ残念なことがあります。最後の部分で東京都が進める英語教育政策を取り上げ、「「東京都の英語教育を受ければ、将来使える英語が身につく」というところまで高めていくことができれば、東京という都市の大きな魅力につながります。しっかりとしたビジョンと細やかな実施体制を整えることが求められます」と結んでいます。しかし、ESAT-Jとこれらの英語教育政策は一つながりです。「将来使える英語」を身につけた若者たちを育てるためには東京都の英語教育政策の本質をきちんと検証することが不可欠であることをしっかりと認識しておく必要があります。
ESAT-Jの問題は終わったわけではありません。
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もう一つの話題は小学校英語関連です。EduAのネット上のサイトに掲載された「英語好きの小学生が減少、中学生は成績が二極化の傾向 その原因は?」という記事です。EduA副編集長の葉山梢さんの署名記事です。
昨年12月にわたくしも取材を受け、そのときの発言も掲載されています。いまは大阪にある短大の学長になった菅正隆元文科省教科調査官の発言も並んで出てきたりしていて、日本酒とカンパリソーダを一緒に呑んでいるような妙な気分がします。
この記事には興味深い調査結果や現状の整理も掲載されていて重要です。
このところ、いろいろなところで話したり、書いたりしているのですが、小学校英語はどんな先生に出会うかによって運命が大きく変わります。子どもたちは先生を選べませんので、まさに「運」の問題です。
伊藤敏雄さんという愛知県の塾の先生が指摘するように、中学生の英語の成績が二極化しているという現状をきちんと認識しておくことも重要です。
新英研事務局長の柏村みね子さんが中学1年生の英語教科書の過重負担(語彙、文法事項など)について意見を述べていますが、小学校、中学校の英語担当の先生たちの意見も丁寧に聞き取っての意見なので説得力があります。
このままの状態を続けると、学校英語教育全体が崩壊してしまいます。
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今回取り上げた2つの話題は無関係ではありません。学校英語教育に関わる諸問題は構造的問題ですので、どこか不都合のある部分の修繕さえすれば全体がよりよく機能するようになるというわけではありません。それでは、諸問題の根源はどこにあるのか。これも以前から繰り返していることですが、わたくしは「「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想」とそれにもとづく「行動計画」にあると考えています。
きちんとした議論がこれまで以上に必要な事態になっています。
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